涙必須の物語

知っている人は大抵号泣している

深作健太という監督が作り出す映画は、何もメジャーな展開を求めていない前衛的な思考の持ち主なのかと思いたくなる。バトル・ロワイアルⅡに関してはともかく、それ以外の作品が何処かコメディ要素を感じさせるような内容になっている、筆者個人的にはそう感じなくもない。特にケンとメリーについては、主演を務めている竹中さんは自身が監督を努めて映画を製作したこともあるので、二重の意味で深作健太という人を完全に食ってしまっていると思えて仕方がない。

もっと他に、何かこうオーソドックスで純粋に感動できる作品はないのかと探してみると、そういう作品もあるのだ。そしてこちらの作品が公開された当初、原作ファンからも高い完成度と内容で別段悪い評価を貰っていないので、比較的良作と言われています。

その作品とは『同じ月を見ている』というもので、原作は同名タイトルの漫画となっています。

オススメの深作作品

三角関係かと思わせといて

この作品は幼い頃からの友人だった少年2人と病弱だった少女1人を軸とした物語だ。少年の1人である『水代 元』はドンという愛称で親しまれていた。そんな彼には人の心を読み取り、そこから感じたものを絵にしてその人の心を癒やす不思議な力を持っていたのです。ドンと元々仲が良かった『熊川鉄矢』は少なからずその異能を持つドンに対して劣等感を感じていました。そんな2人にある日知り合いになった『杉山エミ』の存在により、ドンと鉄矢、そしてエミの関係を変革させる出来事が起こる。

それは鉄矢が間違って山火事を起こしてしまい、そのせいでエミの父親が死去してしまったのだ。ドンはそんな鉄矢の罪を被って少年院へと送致され、やがて鉄矢とエミは恋仲へと発展していきます。やがてそれぞれが大人になった後、服役をしていたドンはエミに会うために刑務所を脱走する。その報せは鉄矢にも届き、間違いなく自分たちのところへ来ることを直感で判断した。その予想通り、ドンはエミが現在住んでいるマンションに辿り着くも、鉄矢がそれを阻みます。

通常ならここから三角関係になって、一人の女性を取り合うのかと思いたくなりますが、全く違う方向へ物語は動き出すのです。正直、こちらの作品はリアルに感動できるので、興味がある人は原作・映画で内容を確認してもらいたい。

窪塚洋介さん主演として

映像化されたこちらの作品の主演を務めたのは、『窪塚洋介』さんだ。この作品、実は窪塚さんが自宅マンションから転落した事件から、無事復帰して最初の作品への出演だったのです。そのため話題性もあって多くの人が劇場へと訪れましたが、その内容に心震わされた人が多かったと聞いています。

何せそれまで演じていなかったような役柄を担当し、見難く歪んだ性格になっている自分と幼馴染であるドンがあまりに変わらない、昔のままであることに劣等感や恐怖といった感情に苛まれていきます。どんなに時間が経っても、何が変わろうと、例え自分の居場所がなくても、ドンちゃんの純粋で真っ直ぐな心にやがて自分が間違っていたと自覚した鉄矢の姿には、何処か共感を覚えます。

エミの存在

そんな2人の間にいたのが、エミという少女の存在だ。現在は鉄矢と恋仲にあるが、元々エミはドンちゃんに対して淡い恋心を幼少期に抱いていたのです。ですが父親を殺した犯人として挙げられたドンちゃんに対して思うところもあったものの、鉄矢との関係によりなんとか立ち直っていきます。

ですがエミは心臓病を患っていたため、それを治すために鉄矢は死に物狂いで勉強していた経緯もあって、ドンちゃんの登場はよりそうした鉄矢の心を逆なでしていってしまった。けれどそれに対してドンちゃん自身が何かするわけでもなく、ただ黙って自分の中に留めるのです。そんな聖人を思わせる姿もあったからこそより鉄矢は追い込まれていった。

映画見よう映画

いつかまた

痛いこと、苦しいこと、悲しいこと、どんな悲嘆に見舞われても、どんな絶望に苛まれても、どれだけ困窮していたとしても、ドンちゃんは作中で恨み言1つつぶやかないのです。そんなドンちゃんにも一つだけいつかまた見たかった景色と取り戻したかった物があった。それを鉄矢が知ったとき、そんなことすら叶えてやれずに自分の嫉妬心に駆られて我を見失っていたことを悔やむ姿も、作品内では見ものになっています。

原作を読んで涙が止まらなかった人もいる、映像作品となってその完璧とも言える内容に称賛の声を上げた人も多いと言われています。深作健太さんの作品の中で、一番の感動作とも言える同タイトルは涙なしには語れません。

すごく泣いた映画